戦国時代から江戸時代の間、現代より食料に乏しい生活をしていただけでなく、地球の気温は今より1〜2度くらい低かったという(小氷河期)。寒さの厳しい東北地方の当時の子供の構成は、長女、長男、次男という偏りが見られるらしい。これは二世代先(孫世代)の働き手となる子供を産む女性を先に確保し、次に男子2人を次の世代の働き手として確保することを意図してのことらしい。こういうサイクルで回さないと村社会を維持できないと考えられていたからだ。

もちろん当時も現代も、女、男、男の順番で子供が生まれてくるようにコントロールすることはできない。だから、意図しない順番で生まれてきた子供、必要以上に生まれてきた子供を殺める=間引きが行われていた。特に女児がその犠牲になった。

しかしこのような時代でも子供は基本的には大切に育てられたという(豊かな現代には及ばないが)。子供は早死にすることも多く、子供の命は尊いものと思われてきた。生き延びるために仕方なく子供を殺め、そのことに心を痛めた親も多かったのだろう。

しかし逆の味方をすれば、こういう環境では子供に対して愛情がなくただの労働力としかみなさないような人間も、現代ほど異質な存在として目立たなかったと想像できる。

私の父型の先祖は北陸が故郷である。東北ほどではないが冬の寒さは厳しく、現代でも何十センチも積雪する地域だ。しかし他の地域と比べて特別食料に乏しい地域ではなかったらしい。とはいえ、冬の寒さに備えて食料を蓄えておく必要があっただろうし、団結して働く必要があっただろう。

また北陸地方は浄土真宗が根付き信仰の厚い地域で、その信仰ゆえに子殺しは忌み嫌われほとんど行われなかったらしい。しかし子殺しを行わないゆえに江戸時代後期には人口過剰となり農民の生活は困窮するようになったという。だから都会や人口の少ない地域に人を送り出し口数減らしをしていた。このような形で移住した人々は、その土地では勤勉でよく働くと評判だったという。

勤勉さと仕事での協調性は、祖父、父、私にも見られる傾向であることからも、協調性がない者は厳しい冬を生き延びられない環境だったのではと想像できる。冬になり働き者のアリは生き残り、気ままなキリギリスは死ぬような話である。

いずれにせよ父型の祖先の生活環境は、自分勝手にしていても生き延びられる食料豊富な環境というわけではなさそうだ。また子殺しが禁じられており、殺人によって地位が上がるような環境とはむしろ真逆の環境である。

ただ「宗教上の理由で子殺しは行わないが、口数減らしのために子供を家から追い出すのが当たり前」の環境であれば、子供に愛情がないサイコパス親の存在は目立たず埋もれてしまうだろうし、道徳心が低いにもかかわらず信心深さを持つ異質性も埋もれてしまうだろう。

また協調性がなければ生存に関わる環境であれば、自己の利害損得しか考えないが生き延びるために協調性を発揮するような人間も同様に異質性が埋もれてしまうだろう。実際、現代社会で組織のリーダーに登り詰めるサイコパスもいるし、彼らに協調性が全くなければその地位にはたどり着けないはずだ。ちなみにアリとキリギリスの話でも、アリは自業自得とキリギリスを見捨てており、働き者である事と道徳心があることは必ずしもセットではないということだ。

つまり食料環境が良いこととサイコパスの生存はそれほど強い相関はなく、社会が成熟するにつれてより高い道徳性が求められるようになった結果、もともと様々な環境で生存していたサイコパスの異質性(共感力や道徳心が低さ)があぶりだされるようになっただけではないだろうか。

ちなみに江戸時代は子供は7歳までは神のうちととらえる風習があった。神様にお帰りいただくという意味も込めて間引きが肯定されたのではないかという。現存するヤノマミ族もシロアリに食べさせた赤ん坊は精霊になると考えるらしい。つまり近代的な教育を皆がそろって受けるようになる前は、大人になってからも呪術的思考で意思決定することはごく普通だったということだ。

参考

もし私が江戸時代に生まれていたら父親の異質性に気づかなかっただろう。私が父親がサイコパスだと気づいたのは彼が70歳になってからで、当時の人間がそこまで生きることはまれだった。父親が年金をもらう年齢になる前に病気や事故で亡くなっていたとしても異質性に気づかなかっただっただろう。私の認識は「偏屈だったけど子供のために一生懸命働いた父親」でとどまっていたに違いない。

現代は食糧事情が良くなり70歳以上まで生きるのが普通になった。皆が近代的教育を受けるようになり呪術的思考をあまり引きずらなくなった。老後は自分の農地と子供の働きによってではなく、ローンで買った持ち家と年金という社会制度で生活するのが一般的になった。このような時代環境の変化により、父親の子供の人生を含めて人生設計しないにも関わらず、先祖崇拝する異質性があぶりだされたのだ。

>>つづく